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救われない話との向き合い方とは

蓮の数式 (中公文庫)

 

 「この本、救われなくて切ないんだよね」

オススメの本ある?と特になにも考えずに聞いた自分に、友人から不意打ちでジャブを喰らった。

 

友人と別れたあと、読もう読もうと思っていたのだけど、その日を境に仕事が忙しくなってしまい、挙げ句リコメンドされたことすら忘れていた。けど、この自粛生活が始まってから「何か新しい日課が欲しい」と考えていたら、ふとジャブの痛みを思い出して読むことに。

 

これから読む人には申し訳ないけど軽いネタバレをすると、
夫と義母からモラハラを執拗に受けている女と算数障害に悩む男の逃亡劇。その一方で妻を殺した女の息子を探し続ける老人が現れ、みなが不幸を背負った状態で二つのシナリオが絡み合っていく。

 

その不幸を振り払うかの様にどこまでも落ちていく描写が続いて、読んでいてすごく辛い気持ちにさせられる。

 

人によっては不快感を覚えるほどだと思うが、自分はというと不快ってほどではない戸惑いみたいなものを感じていて、この本のことを考えていると深呼吸したくなる。

自粛生活も相まって陰鬱な気持ちに拍車がかかるんだけど、じゃあ人に勧めたくないかっていうと、そんなことはない。

 

こういった救われない話との向き合い方を知らないおかげで登場人物の誰にも感情移入しきれず、逆に自分は幸せなんだと感じられるし、単なる読み物としても普通に面白い。

 

もし重たい話が嫌いでなければ、ぜひ読んでみて欲しい。

蓮の数式 (中公文庫)

蓮の数式 (中公文庫)

  • 作者:遠田 潤子
  • 発売日: 2018/01/23
  • メディア: 文庫